
木曜日は到着日、月曜の夜には帰国なので、バリ舞踏を見ることができるのは金曜から日曜。 金曜日は、前回ティルタ・サリを見ているので、APA?のお勧めにも従って、サダ・ ブダヤを見ることに決めましたが、ほかの日をどうしよう。 土曜日のビマ・ルマジャも考えたのですが、火曜日のラーマーヤナと比べると情報がないので、ARMAのページを見ていて、 ここ自体ちょっと気に入ったこともあって、ホテルから近い(ホテルのサイトの情報からARMAの向かい?とか思っていた、 実際にはもっと南西の方でしたが距離としては1kはないですね。)、 ARMA(オープンステージ)のプリアタンマスターズを見ることに決めました。
当日は、夕方徒歩でチプタ・ラサへ向かい、ちょっと早い夕食を済ませてARMAへ戻りました。 南門から入って、既にcloseしている美術館の入り口で'プリアタンマスターズを見たいんだけど'と話すと、薄暗くなった庭を通ってオープンステージまで案内してくれました。 並んでいる椅子はざっと2列で30。前列真ん中の10席ほどは'IBUなんとか'と書かれた紙が張ってあります。 ちょうど券を売り始めたところで、数人の外人さんに続いてチケットを購入して、前列ステージに向かって右の方に席を確保。 写真とかでは分かりませんが、ここ客席の上かなり後ろまで屋根があります。雨が降っても大丈夫のようですが、 ステージの方はどうするんでしょう?
待っていると、だんだんと楽団のおじさん&おじいさんが集まってきます。 そのままステージ右手の建物の階段に座って世間話。なかには孫を連れた人も。緊張感は全くなし、でした。
そして、開演時間になると、皆ぞろぞろと自分の楽器の場所へ。 最初は、楽団だけのinstrumentalで、66年に書かれた新しい曲、"KEBYAR SUSUN"。 そして"PENDET"へと続いていくのですが...
それほど数を聞いているわけではありませんが、ガムランは好きです。今日は徹夜でプログラムを書くぞ、 というときは良くBGMにしました。(結構乗ってコードが書けます。) でも、音が軽い(感じがする)んです。プリアタン マスターズ。荘厳な感じがあんまりない... なんでかな、と考えてみたんですが、自分なりの結論としては、極限まで音が揃っている、からではないかと。 他の楽団だと、確かに揃ってはいるんですが、すごく微妙なところではやっぱりずれがあって、それが音の重さにつながっているのではないかと。 プリアタン マスターズ、本当に'一糸乱れぬ'演奏なんです。それも皆が一生懸命揃えようとしている、なんていうところは微塵もなし。 皆、思い思いに、虚空を見つめていたり、背中を掻いていたり、お客さんの品定めをしていたり(だって、楽団の人の方が多いので)、 目を閉じて自分の世界に入っていたり。
でも、本当に揃っています。そしてガムランに表情があって、しかもそれが豊かです。 思い返してみると、他の楽団は'常に全力'みたいな感じでした。 押すところは押す、乗るところは乗る、そして力を抜くところは抜く。 それを、何の指示に従うわけでもなく、しかも見事なまでの統一感。
'燻し銀'というのは、ちょっと違う形容だと思いました。 ジャズとは違うのかも知れませんが、まさしく'スイング'しています。ガムランが'歌っている'、と言ってもいいかも知れません。 ガムランを聞いて体が動き出したのは、これが初めてです。
でも、おじさん&おじいさんたちばかり見ていたので、ごめんなさい、舞踏の方はほとんど見ていませんでした。すみません。
そして、乗りまくって(音だけなので、傍目にはたんたんと、ですが)全て終了すると、楽団のメンバは舞台から客席の方へ降りてきます。 そして、観客と握手を交わすと、なんと、そのまま三々五々、連れ立って家に帰り始めるではありませんか。 スイングしていたプレーヤは、また一瞬にして'普通の'おじさん&おじいさんに戻っています。
ほんとうに素晴らしい体験でした。次回また日曜日に滞在していて新月でも満月でもなかったら(この時はケチャになります)、 絶対行きます。
さて、Ubud Village Resortに泊まって、プリアタン マスターズを見に行くと、一つ良いことがあります。 帰りの道、西へ折れてからは人通りがなくなるのですが、楽団のメンバの中にはホテルの近くの集落の人がいるんです。(この時は二人。 )集落への分岐からは、もうホテルの門が見えます。 私達は、そこで手を振って、もう一度拍手して、ホテルの方へ向かいました。楽団のメンバも笑いながら手を振ってくれました。
その夜は、二人ともなかなか興奮が醒めませんでした。 この日は、バリ舞踏を見に行った、のではなく、ガムランの'セッション'を聞きに行った、のだと思います。間違いなく。